彫金の奥義 24
[ 研磨やら仕上げのお話し ]
台風が来たりしてるせいか山奥でも残暑が続いておりますが、皆様元気でお過ごしでしょうか?
又々、久しぶりの奥義でゴザイマス。
何年も使っていた研磨用の[ どこでも研磨BOX ]がだいぶボロくなったので、新しいのを作りました。
何と材料費はわずか500円程度。画像は3ヶ所穴を空けたダンボール
(裏にもう一ヶ所リューターを入れられる開閉出来る切り込みがあります。)と
ラバーシート2枚、木で作った枠にクロス入りのビニールテープを貼った物。
(100均の額縁とかでも代用になる物もあるかと思いますが、)
で、これが完成品。ラバーシートをボンドで貼って黒の布テープで補強して、
枠をボンドで貼って、窓の部分はラップをセロテープで留めてあります。
ラップは薄いので視界はクリアーな上張り替えも簡単です。
で、この左右の穴から手を入れて中で研磨作業をすれば
粉塵や薬品を吸い込む事なく作業出来ます。(手を入れてると暑いです)
儲かっている工房ではバキューム付きの研磨設備は普通なのでしょうが…
研磨剤を使う時一番使い勝手がイイのがニトリロゴム引きの布手袋、
研磨剤を付けた布を細い竹の棒で引いて磨きます。
昔から色々な研磨剤を使ってみましたが、手荒れしたりのどや胸が気持ち悪くなるので
光らせたい時だけ市販の研磨剤の「Amor」を使うのですが、やはり吸い込むとダメージあります。
彫金業界では長い事バフなどの研磨作業をしていて重い肺疾患になる人が多いと聞いています。
で、最近では極力薬品系の研磨剤を避けるため、前画像の歯磨き粉とか
左から「木灰」「粘土」「砂」などを用途に応じて使っています。
今年もゴーヤが元気です。
彫金の奥義 23
[ バネのお話し ]
ここのところblog更新してなかったけど、すっかり春めいてまいりました。
久しぶりにお仕事のお話しをPOSTいたします。
写真は最近の作品「タマシイのクリップペンダント」です。
「クリップに何かを取り付けつつペンダントとして提げられる。」をコンセプトにした
あまり一般に馴染みのないアイテムでございます。
銀素材は柔らかいので、ブローチ、クリップ仕様の物はバネ素材を使用いたします。
クリップは既製のタイピン用のバネ使用。
既製のバネ以外はステンレスバネ線で自作いたします。
0,6から1,5㎜くらいの太さを作品に応じて使います。
ブローチは微妙な曲げ方でバネになっていて、
ブローチの大きさで0,6〜0,8㎜を使い分けます。
バネ線は火を掛けられないので、ピンをカシメて留めてあります。
こちらまだ雪が残りつつも福寿草が咲きました。
彫金の奥義 22
[ 保持具のお話し ]
一部の方々の熱いリクエストにお答えして久々の奥義のUPでございます。
ロウ付けのパーツの固定には、いくつかの方法があります。
以前奥義9・18などでも紹介しましたが、今回は特製の保持具をご紹介。
画像の保持具は0,8〜1㎜のステンレスバネ線を曲げて、
一部平延したり、ロウ付けして作ってあります。
画像では解りづらいかと思いますが、右端は一方の先端を平たくして折り返し
溝を付けてあります、それぞれの先端が微妙なトコです。
で、細かい説明は端省って
画像のようにそれぞれの保持具を使うと、大幅に作業時間を短縮出来るのです。
今年は当分雪掻きがメインの仕事です。
彫金の奥義 21
[ 金の玉貼り ] ひさびさの奥義のUPでゴザイマス。
いろいろな部分へ玉をキレイにロウ付けするのはけっこうシビアな作業ですが、
一手間かけると割と確実なポイントに接着することが出来ます。
まず付けたい所に浅く凹みを削ります。(チョット写真解りづらいですが…)
次に1ミリ角(左)ほどのロウを金槌で潰します。(潰すと右のように丸っぽくなります。)
そのロウをサイコロ台に押しつけ皿状にして
フラッグスを付けて凹みに置いて
付けたい玉を置きます。
ソロリソロリと火を当ててロウ付け。
これを繰り返して貼り付けてゆくのです。(アンティークの玉貼りなんかは
また別の秘法があると聞きましたが…)
この方法だと正確なポイントにしっかり付くのでオススメなのです。
山奥にもやっと桜が咲いてきましたよ。
彫金の奥義 20
[ 槌いろいろ ]
ここしばらく打ち出しの技法が多いので、(上の作品は石まわり以外全部打ち出し)
いろいろと使ってる槌など公開いたします。
打ち出しはけっこう重めの真ん中の金槌、石留めは軽い金槌
一番小さいのは金の布目象眼用(自作)、左端下はサイズの目安の鉛筆です。
こちらの槌は大きく曲げたり板延べに使う大槌、右端上が僕の振れる限界。
左端下が普通の大工道具の金槌、ホームセンターで買って来て打面を成形して使います。
部屋はけっこう暖かいので虎の尾に蕾が出てきました。
彫金の奥義 19
[秘技蛸の足] メイキングのカテゴリーに入れようかとも思ったのですが、
地金から作ってもワックスで作ってもタコの足はシビアな努力が要求される造形なので
今回もったいぶりつつ奥義として伝授いたします。
まずは吸盤の位置を正確にポイントします。
裏から打ち広げます。
さらに序々に、打ち、押し、広げてゆきます。
吸盤の大きさまで穴が広がったところで、丸線を擦り合わせ5回くらいに別けて
裏からロウ付けします。
ロウ付けが終わったら高さを合わせて削り揃え
先細く削り曲げた丸線と擦り合わせロウ付けします。
曲げていく前に吸盤部分のくぼみを打ちつつ叩いて広げます。
接合部を削り均し吸盤を作り込みつつ序々に丸めていって完成です。
うう、すべてがタコに見えてきた。
彫金の奥義 18
今年はしばし忙しくてblogの更新が少なくなっちゃってますが、
久しぶりに技法のオハナシをポストいたします。
虎のデザインの作品を制作したのですが、やはり虎は黄色でないと
パっとしないんで、金を貼り付ける技法で制作しました。
右下が22金を叩いた薄板。・面積が広いので分割してトレースします。
トレースした金パーツを切り出し、曲げ擦り合わせてロウ付けします。
その際、ステンレスのクリップを使って数カ所を固定すると、
多少の擦り合わせの隙間を押さえる事が出来ます。
金を貼り付けたあと縞の部分は削り取ってしまいます。
コチラ、紅葉もそろそろおしまいの寒さです。
擦り合わせ 彫金の奥義17
四谷のグループ展「蟲展」ご来展頂きました皆様、ありがとうございました。
で、虫作品制作中のメイキングをUPします。
ほとんど奥義と呼ぶには普通の技法でありますが、とりあえず数の内と言うことで。
曲面にパーツを貼り付ける場合、ただ目見当だけで曲げたパーツは
隙間なく擦り合わせるのは中々ムズカシイものです。
なので、一方をヤットコで押さえ、もう一方をヤットコで押しつけて曲げます。
さらにロウ付けの時、カラゲ線で隙間を押さえて付けます。
フグの目キレイ
ロウ付けのこと 彫金の奥義16
彫金の仕事にはいろいろな工程がありますが、今日は銀の接着「ロウ付け」のお話。
ロウ付けは技法的にも作家によっても実に十人十色の工程だと言えます。
銀のロウ付けに使用するフラックスにはいろいろな物が市販されていますが、
僕はブルーフラックスとノーマルなホワイトフラックスを半々くらい混ぜて
使っています。ブルーフラックスを混ぜた方が跳ねや膨れが少なくなります。
ジャムの小ビンに使い切れる分だけ少しづつ出して使っています、
フラックスが濁って古くなるとロウの流れが悪くなってしまうからです。
フラックスの使い方で重要なポイントはロウをフラックスに浸けるトコで
彫金の本や教室でも接着面にフラッグスを付けるように教えていますが、
ロウに衣のようにフラッグスを付けて空気に触れさせない方がロウ目が残らず
流すポイントに置くだけでキレイに流れます。
けっこうロウを置くポイントもシビアな時もありますが…
わりかしフラックスは多めに使う方です。
すっかり真冬の鹿島槍
鉄の道具のお話 彫金の奥義15
子供用のお絵かきアプリをダウンロードしたのでお絵かきしてみました。
ちょっと前に彫金技法についての記事に励ましのメッセージをいただいたので
期待にお答えして今回久しぶりの彫金ネタです。
彫金の仕事のほとんどは鉄の道具を使用しますが、古い道具のリサイクルのお話。
キサゲの話を以前書きました、折れてしまったドリルの刃を削って
細キサゲを作る話ですが、同様にリューターの切れなくなった刃は
ダイヤモンドヤスリで削ってリューター用の回転ヘラを作ります。
(超硬刃の場合は焼きなまさずそのまま加工します)
超硬の材料もダイヤビットやディスク砥石でけっこう簡単に加工出来ます。
特種な加工としては右の写真の下2本は上の2本(丸、半丸)を加工したヤスリで、
この場合ヤスリをいったん焼きなまし(高温を加えてゆっくりさます)
柔らかくなったヤスリを普通のヤスリで削って市販品にはない形に削り直してから、
もう一度焼き入れ、焼き戻しして使います。(切れ味は少々落ちますが)
注・同じ鉄でも炭素鋼でない釘などの鉄は焼き入れしても硬くなりませんが
刃物もスタンプも基本的に同じように作りますが材料はまず前記のように焼きなまし、
形を作った後、焼き入れをします。 キサゲやスタンプくらいの小さい物は
けっこう真っ赤に加熱して水で急冷すればキッチリ焼きが入ります。
(水ではなく、油とか、職人の人に固形石鹸に突っ込んで焼き入れすると
聞いたことがあります。) 最後の焼き戻しが一番重要です。
(焼き入れしただけの鉄は硬すぎて折れたり欠けたりして使えません。)
焼き入れた後の鉄材の表面をまず紙ヤスリではがし、色の変化を見やすくして、
先端を下にして(熱は上にいくから)刃先より離れた部分を加熱していきます、
先端がキツネ色とタヌキ色の中間くらいで冷やします。(水冷可)
上の絵の→より手前(白、黄)はまだ焼き戻っていない部分です。
珍しく大長編になりました